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 2006.4月 静岡グランシップ 講師 医学博士 宇都宮光明

アーク光線の温熱作用
温熱作用を利用する温熱療法(理学療法・物理療法)の熱源には、
@輻射線が物体に吸収されて熱に変わる輻射熱。
A物体の熱が高温部から低温部へ移動する伝導熱。
B液体や気体のような流体の熱が移動する対流熱。
がある。アーク光線の温熱作用は、温度輻射の原理を応用し、高純度医療用カーボンを摂氏
3000度で燃焼させることで得られる、太陽光線に近似した近赤外線の波長域の輻射線による
輻射熱である。それ故、伝導熱、対流熱と異なり、透過性に優れ体内を深部から温める作用がある。このアーク光線の温熱療法の効果として従前より知られているのは、【1】鎮痛、
【2】筋緊張暖和、【3】末梢循環の改善、【4】心拍出量の増大、【5】新陳代謝の促進、【6】発汗
作用などであり、使用法は一台から二台の治療器を開放された状態で用いる局所温熱療法と、主に光線療法の治療院で用いられている四台から五台の治療器を箱型の閉鎖空間内で点灯して全身に45分前後照射するルーフ式マルチアーク療法と名づけた全身温熱療法があるが、後者はすべての熱源を利用する為、温熱効果を高める利点がある。
ところで、病院で癌治療に厳重な監視下で目標値を42℃前後に設定した加温療法(ハイパーサーミア)が用いられているが、近年になって、安全かつ簡便な加温療法としてアルミ箔で覆った断熱性の閉鎖空間内で赤外線加温器を用いて目標値を39−39.5℃に設定した加温療法の効果が検討されている。すなわちこの程度の熱刺激で生成される熱ショック蛋白質
(Heat Shock Protein ・ HSP)が内因性生体防御に欠かせないことが解明され、また大量の発汗が体内毒素のデトックスに果たす役割が指摘されているからである。アーク光線の場合、局所温熱療法で熱ショック蛋白質の生成は促されるが、熱ショック蛋白質とデトックスの双方の効果が期待できるのは全身温熱療法である。この点について述べる。
(赤外線には近赤外線780−1500mμ、中間赤外線1500−5000mμ、遠赤外線5000mμ―10000mμがあるが、太陽光線の赤外線の大半は近赤外線が占めている。なおヒトは
8000−10000mμの遠赤外線を放射する。)

熱ショック蛋白質
[熱ショック蛋白質の発見]
熱ショック蛋白質は、1962年にリトスがショウジョウバエに温熱刺激を与えると、遺伝子発現が誘導されて新しい蛋白質を産出することを報告したことに端を発する。
発見当初は余り注目されなかったが、その後の研究で、熱ショック蛋白質の遺伝子は細菌から哺乳類まで共通に見られ、さまざまなストレス刺激に遺伝子が応答して、ストレスに対する耐性を誘導して細胞を保護する内因性生体防御効果に優れた蛋白質であることが明らかにされた。この蛋白質は温熱刺激で最も誘導され易く、産出量が約100倍と著しく増加するため、熱ショック蛋白質の呼称が一般化しているが、ストレスでも生成されストレスに対する抵抗性を高める観点から、ストレス蛋白質と呼ばれることもある。

[熱ショック蛋白質の副作用予防作用]
熱ショック蛋白質はストレス反応による細胞傷害から細胞を保護するだけでなく、その後に加えられる強い障害性のストレス、例えば致死的なストレスから細胞を保護する防御作用がある。この点について、副作用を予防する効果についての報告から引用する。
広く用いられる消炎鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬)には、発痛因子であり胃粘膜保護因子でもあるプロスタグランジンの産生を抑制する薬理作用があるため、むしろ主作用として胃粘膜傷害や胃潰瘍を起こすのであり、特に胃粘膜保護機能が低下している高齢者で高率に認める。また手術や抗癌剤や放射線療法のような侵襲的治療が患者に大きな負担を強いるのは当然である。熱ショック蛋白質はこれらの治療に伴う副作用を抑制し、侵襲に対する耐性を高める作用が明らかにされている。
実際、アーク光線を副作用が避けられない治療前に使用することで、副作用が軽く済み、
その後の経過が良かったという体験談は良く聞くが、この副作用を抑制する効果に熱ショック蛋白質の産出が関わっているのである。

[熱ショック蛋白質の自然免疫機能亢進作用]
免疫は自然治癒力の根幹をなすものであり、自然免疫と獲得免疫に大別されるが、病原性微生物と戦う感染抵抗性や抗癌作用などの生体防御能に関わっている。自然免疫は先天性に備わっている免疫機構で、すべての生物に存在する非特異的な生体防御機構であり、獲得免疫は進化に対応して獲得した後天性の免疫システムで、脊椎動物だけにあり、自己にあらざるもの(非自己)を抗原と認識して抗体を産生し、抗原抗体反応で非自己を撃退する特異的な免疫反応である。しかし高度の抗原特異性を獲得した獲得免疫は、外来抗原に過剰に反応してアレルギー疾患の、自己の細胞に異常に反応して自己免疫疾患の病因になることから、抗原抗体反応(免疫応答)の恒常性(ホメオスターシィス)を維持することが大切である。
アーク光線は免疫機構に深く関わっている。獲得免疫に及ぼす作用についてはこれまでにも
述べたので簡略に例示すれば、ビタミンDが獲得免疫を担うマクロファージやリンパ球(T細胞・B細胞)の細胞分化を誘導して活性化し、細胞機能を阻害するカルシウムパラドックスを予防する等々である。自然免疫は即座に非自己を認識して攻撃を仕掛け、個体が抗原抗体反応で立ち向かうまでの空白の時間をうめる働きをするが、近年、その重要性を裏付ける研究が相次ぎ、自然免疫は獲得免疫の補助的で原始的な免疫システムとの概念は修正を迫られている。熱ショック蛋白質はこの自然免疫の機能を亢進させる。
すなわち熱ショック蛋白質はウィルスの増殖を抑制する抗ウィルス作用を始め広範な薬理作用があるインターフェロンなどサイトカインと総称される生理活生物質や腫瘍細胞や腫瘍内新生血管を傷害し腫瘍細胞の増殖を抑制するが正常細胞は傷害しない腫瘍(癌)壊死因子
(TNF)などの物質が増加する体液による防御、マクロファージや樹状細胞や好中球(顆粒白血球)の食作用による防御、補体(自然抗体)の食作用促進による防御、抗原抗体反応の手続きなしに非自己を認識し食作用により除去するリンパ球のNK細胞やNKT細胞による免疫監視機構による防御など自然免疫の作用を亢進させる。なお、マクロファージや樹状細胞は食作用で取り込んだ非自己(抗原)の情報を獲得免疫を狙うTリンパ球に提示し、抗体産生のメカニズムが起動するのを助ける作用がある。

[熱ショック蛋白質の蛋白質の品質管理作用]
熱ショック蛋白質の主要な作用に生物の構成成分で機能を支配する蛋白質の品質管理がある。そもそも生物は蛋白質が役割に応じて正しく働けば健全な機能を保つが、蛋白質に構造上の間違いが生じたり、変性を起こしたり機能障害に陥ると病気の原因になり、また、病気によって特異的な蛋白質が発現して病気を増悪させることが、次々に明らかにされている(分子標的薬・遺伝子創薬)。
ところで、熱ショック蛋白質が蛋白質の品質を管理する作用は、標的蛋白質と結合して構造形成や機能や活性を制御することである。すなわち蛋白質に構造上の間違いや変性があれば正常な構造に戻すように働き、機能障害があれば正常に回復する機転を促進する。
このような機能をシャペロン機能という為、熱ショック蛋白質を分子シャペロンと言う。

体内毒素とデトックス
文明の進歩は地球環境を汚染する有害物質を枚挙にいとまがないほど産み出した。
これら環境汚染有害物質が食物や水や皮膚や大気を介して体内に取り込まれ蓄積したのが
体内毒素である。代表的な体内毒素の有機塩素系化合物のダイオキシンで述べれば、ダイオキシンは作ろうとして作った物質ではなく、除草剤やプラスチックや塩化ビニルのような化学製品の処理の過程で出来てしまった猛毒物質であり、その特徴は脂肪組織に溶けて(脂溶性)容易に排泄されず体内に蓄積することである。そのため水に含まれる量を1とした時、食物連鎖の過程で順次濃縮され、食物連鎖の頂点にいるヒトでは数万倍から10万倍程度まで濃縮される。これを生物濃縮というが、皮下脂肪、肝臓、腎臓、卵巣、脳などに蓄積し、生物学的半減期は十年前後にもなることから、体内蓄積量は年齢と共に増えるのである。
ダイオキシンの一般毒性の症状には、倦怠感、四肢の脱力感、しびれ感、頭重、食欲不振、不安感、興奮などがあり、重症者では腱反射亢進、平衡失調、ふるえ、痙攣、昏睡状態、呼吸抑制および肺水腫を起こして死亡することもある。また免疫機能の低下、造血機能の低下、物質代謝の低下を起こす。ダイオキシンの特殊毒性としては、内分泌撹乱物質としてホルモン類似の作用を呈することから環境ホルモンと呼ばれるが、精子の減少、子宮内膜症の増加などとの関連が指摘されている。加えて変異原性、発癌性、催奇性、染色体異常などを生じるとされている。
最近、デトックスという言葉をよく耳にする。デトックスとは環境汚染から健康を守るため体内毒素を除去するという意味合いで使われている。その為さまざまな立場からデトックスが論じられている。しかしダイオキシンのような脂溶性の安定した人工化合物の除去は極めて難しいとされてきた。この点について大量に発汗することが除去に役立つことが指摘されている。
ところでダイオキシンを最も効率よく除去するのは母乳である。母乳の脂肪は血液中の脂肪の十倍に濃縮されているので、母乳には高濃度のダイオキシンが含まれている。その為、
乳児への汚染、悪影響が懸念されるが、厚労省はそれでも母乳のメリットが勝るとしている。もう一つの経路が皮脂腺を介する除去ルートである。発汗には汗腺からの汗と皮脂腺からの汗があり、汗腺からの汗は主として体温調節に関与するが、成分的に尿に近くダイオキシンの除去には役立たない。これに対し皮脂腺からの汗の成分には脂質が含まれており、ダイオキシンや有害重金属を含む汗であるが、この種の汗は大量に発汗するような場合にのみ出る汗で、日常的にはなかなか出ない。しかし全身温熱療法(ルーフ式マルチアーク療法)で大量に発汗すると皮脂腺からの汗が出るので、ダイオキシンのような脂溶性の体内毒素のデトックスを促すのである。

温熱療法の適応症の拡大
アーク光線は太陽光線の全波長域を放射するので、温熱作用はその一部だが、これまでに経験したさまざまな効果に温熱療法としての相乗効果が関わっている。殊に昨今、温熱療法の適応症の拡大が検討されている。
すなわち適応症として、ストレス潰瘍(薬剤副作用による胃十二指腸潰瘍を含む)、外傷、
炎症、感染症、外科手術の前後、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、関節症、酸化ストレスによる動脈硬化に起因する疾患(脳血管障害、心筋梗塞、脳梗塞)、高血圧、強直性脊椎炎、自己免疫疾患、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、うつ病などさまざまな病気で有効性が指摘されている。更にHIV感染者(エイズ)のウィルス量を減少させることが可能との報告もあり、また蛋白質の高次立体構造形成のプロセスに問題が生じて蛋白質が凝集するアルツハイマー病やプリオン病(狂牛病)への応用も検討されている。

健康な未来のために
光線の作用に関する研究は、二十世紀の前半までに紫外線の殺菌作用やビタミンD生成による抗クル病作用などと可視線の光合成作用が発見されたこともあって、赤外線の温熱作用が生物に及ぼす作用の研究が出遅れたこと否めない。しかし、近年になって赤外線の温熱作用にこれまで知られていなかった健康を増進する作用、換言すれば内因性生体防御機構を高める作用があることが明らかにされた。また、使用法を工夫することでダイオキシンのように未来の世代の健康を蝕む環境汚染有害物質の除去に役立つのである。
私は予てから、太陽光線の恩恵は既知の恩恵だけでなく未知の恩恵は無限であり、その
すべては太陽光線を浴びることによって与えられるといい続けてきたが、地球の生態系を育んだ太陽光線のすべてのスペクトルを浴びることが自然の摂理に適うことを認識してこそ、健康な未来が約束されるのである。



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